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浦和地方裁判所 平成11年(ワ)835号 判決 1999年6月25日

原告

株式会社東海銀行

右代表者代表取締役

西木由喜夫

被告

工藤松男

被告補助参加人

山岸利男

主文

一  原告を債権者、被告を債務者とする浦和簡易裁判所平成一一年(ロ)第一一七一号支払督促事件について、同裁判所書記官が発した支払督促に対する被告補助参加人の異議申立てを却下する。

二  被告補助参加人の前記異議申立てに係る費用は、同補助参加人の負担とする。

事実及び理由

一  本件は、原告を債権者、被告を債務者とする浦和簡易裁判所平成一一年(ロ)第一一七一号支払督促事件(以下「本件支払督促事件」という。)について、同裁判所書記官が同年四月一六日付で債権者の請求に係る支払督促(以下「本件支払督促」という。)を発したところ、債務者の連帯保証人であったという日榮ファイナンス株式会社に対して債務者のために連帯保証人になったという被告補助参加人が、同年五月六日、本件支払督促に対して、債務者の補助参加人として異議を申し立てたため(以下「本件異議申立て」という。)、同裁判所書記官において、本件支払督促に係る債権者の請求(その目的の価額は九〇万円を超える。)について、当裁判所に訴えの提起があったものとみなされる余地もあることを考慮して、同月一〇日、本件支払督促事件記録を当裁判所書記官に送付したことから、当裁判所において、本件異議申立ての適否及びこれが適法である場合の本件支払督促に係る請求の当否について審理裁判が求められている事案である。

二 そこで、本件異議申立ての適否について検討すると、本件異議申立ては、被告補助参加人が、原告を債権者、被告を債務者とする本件支払督促事件を訴訟に移行させ、その訴訟に補助参加する目的で、債務者の補助参加人として申し立てたものであるが、民事訴訟法四五条一項は、補助参加人がすることができる訴訟行為について、「攻撃又は防御の方法の提出、異議の申立て、上訴の提起、再審の訴えの提起その他一切の訴訟行為」と規定しているところ、訴えの提起、訴えの変更、請求の認諾・放棄、訴えの取下げなどの訴訟行為を例示していない。それは、これらの訴訟行為が同項にいう「その他一切の訴訟行為」に含まれるからではなく、補助参加の趣旨ないし目的が、他人間の訴訟係属を前提に、その一方を補助するための補助参加人の参加を予定するものであるから、他人間の訴訟係属それ自体を発生させたり、既に係属している訴訟を変更したり、その訴訟係属を終了させたりすることは、その趣旨ないし目的に沿わないので、これらの訴訟行為を補助参加人がすることができる訴訟行為から除外する趣旨であると解される。そして、右見地から支払督促に対する異議についてみると、支払督促に対する異議は、これにより当該支払督促に係る請求について訴えの提起があったとみなされ、債権者を原告、債務者を被告として、両者間に訴訟係属を発生させるものであるが、訴訟係属の発生が、通常の訴訟のように原告となるべき債権者の訴えの提起によらず、被告となるべき債務者の異議の申立てによっているのは、支払督促制度が、債務者に異議がない限り、債権者が訴訟手続による審理裁判を経ないで当該支払督促に係る請求について簡易に債務名義を取得し得ることとした制度であることに由来するものである。したがって、当該請求について訴訟係属を発生させるか否かは、債務者自身の判断に委ねられるべきものであって、債権者の債務者に対する当該請求について利害関係を有する第三者であっても、債務者が支払督促に対する異議を申し立てず、債権者の当該支払督促に係る請求の当否について訴訟手続による審理裁判を求めていないのに、当該第三者が債務者の補助参加人として支払督促に対する異議を申し立て、債務者をして、債権者の請求の当否について訴訟手続による審理裁判を受けることを余儀なくさせるということは、民事訴訟法四五条一項の本来予定しないところといわざるを得ない。

要するに、支払督促に対する異議の申立ては、これにより債権者と債務者との間に訴訟係属をはじめて発生させる点において、既に他人間に係属している訴訟について、第三者が補助参加人として民事訴訟法四五条に例示されている上訴の提起、異議の申立てをする場合と同列に論ずることはできないのであって、仮に第三者が債権者の債務者に対する当該支払督促に係る請求について利害関係を有するとしても、債務者自身の異議の申立てにより当該請求について訴訟係属が発生するのを待ってはじめて、債務者の補助参加人として、当該訴訟に参加することができるにとどまるものといわなければならない。

右説示したところによれば、本件異議申立ては不適法であって、本件支払督促に係る請求について、当裁判所に訴えの提起があったものとみなすことはできないところ、浦和簡易裁判所書記官において、前記のとおりの考慮から、本件支払督促事件記録を当裁判所書記官に送付し、当該請求について、形式上、適法な異議申立てがあった場合と同様に、当裁判所に訴訟係属が発生しているかのような外観が生じているので、この形式上の訴訟係属を排除する必要があるが、そのためには、口頭弁論を経ないで、判決をもって、不適法な本件異議申立てを却下すれば足りると解するのが相当である。なお、本件のような場合においては、本件支払督促事件の債務者である被告が本件支払督促の送達を受けた日である平成一一年四月二七日から既に二週間が経過しているが、被告補助参加人の本件異議申立てにより本件督促事件記録が当裁判所に送付されているので、債権者である原告としては、本判決が確定した日から三〇日以内に、浦和簡易裁判所書記官に本件支払督促に対する仮執行の宣言を申し立てることができると解されるべきである。

三  よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官滝澤孝臣 裁判官齋藤大巳 裁判官平城恭子)

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